第1話 魔王様を見つけました

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/6/15 📚 シリーズ: 魔王様、結婚してください 📝 1,422文字 ✅ 全年齢

あらすじ

魔王城は三ヶ月で陥落した。 犯人は聖女だった。 魔王に一目惚れした聖女アリアは、毎日魔王城へ通い続ける。 「好きです!」 「結婚してください!」 今日も元気に告白するアリアと、 「帰れ」 と言いながら追い返せない魔王ゼノ。 気付けば門番も、侍女も、くーちゃんも、そして魔王城まで少しずつ変わっていく。 これは、 好きだから会いたい。 好きだから会いに行く。 ただそれだけを続けた聖女と、 不器用な魔王の優しい恋のお話。 🌸🏰🖤 疲れた日に少しだけほっこりできる、 花と綿毛ともふもふの異種族ラブコメです。

本文

第1話 魔王様を見つけました

魔王城は今日も静かだった。

人間たちが想像するような、血と悲鳴に満ちた城ではない。

廊下は磨かれ。

庭は手入れされ。

使用人たちは忙しそうに働いている。

そんな魔王城の執務室。

そこに一人の男がいた。

魔王ゼノ。

漆黒の外套をまとい、机の上の書類へ視線を落としている。

戦争。

食料。

国境。

復興。

外交。

積み上がる仕事は終わらない。

今日も朝から書類の山だった。

「ゼノ様」

控えていたガルドが静かに声を掛ける。

「なんだ」

「アリア様が来られています」

ゼノの手が止まった。

数秒。

沈黙。

「またか」

「はい」

「帰せ」

「もう来ます」

「そうか」

ゼノはペンを置いた。

疲れた顔をした。

まだ昼前である。

ガルドは何も言わなかった。

本日で八十七日目。

聖女アリアが魔王に会いに来るようになってから、八十七日が経っていた。

最初の頃は止めた。

門番も止めた。

侍女も止めた。

ガルドも止めた。

だが。

アリアは会いに来た。

翌日も。

その翌日も。

毎日会いに来た。

結果。

今に至る。

コンコン。

「アリアです!」

返事を待たずに扉が開いた。

花の香りが流れ込む。

春が来たみたいだった。

「ゼノ様!」

淡いクリーム色の長い髪。

春空みたいな青い瞳。

髪には小さな白い花。

今日もよく似合っていた。

アリアが机の前で止まる。

今日は早かった。

普段なら。

花を見る。

怪我人を見つける。

子供に呼ばれる。

侍女に話しかけられる。

寄り道ばかりする。

綿毛みたいな聖女だった。

ふわふわしていて。

どこへ飛んでいくか分からない。

アリアは机の前で笑う。

まず目を見る。

赤い瞳。

今日も綺麗だった。

少し安心する。

次に顔を見る。

疲れていそうではない。

よかった。

手元を見る。

今日も書類が多い。

大変そうだった。

最後にもう一度目を見る。

やっぱり綺麗だった。

アリアは満足そうに頷く。

「会いに来ました!」

「そうか」

「会いたかったです!」

「そうか」

「今日もかっこいいです!」

「そうか」

ガルドは思った。

もはや挨拶だな、と。

「ゼノ様」

「なんだ」

「見てください」

最近よく聞く言葉だった。

アリアは少し身を乗り出す。

白い花が揺れた。

「今日のお花です」

予想通りだった。

アリアは髪に飾られた花へ触れる。

「神殿の侍女さんが選んでくれたんです」

「そうか」

「似合っていますか?」

期待した目だった。

ゼノは花を見る。

白い花。

小さな蕾。

春みたいな色だった。

「似合っている」

アリアが固まった。

数秒。

瞬きを繰り返す。

「本当ですか?」

「嘘を言う理由がない」

次の瞬間。

アリアの顔がぱっと明るくなった。

「嬉しいです!」

満面の笑みだった。

花が咲いたみたいだった。

ゼノは書類へ視線を戻す。

だが。

少しして気付く。

見られている。

「なんだ」

「見ています」

「なぜだ」

アリアは少し考える。

そして笑った。

「好きだからです」

ゼノは書類から目を上げた。

アリアは不思議そうに首を傾げる。

ガルドは静かに天井を見た。

今日も平和だった。

「会いたかったんです」

「そうか」

「顔が見たかったです」

「そうか」

「元気そうでよかったです」

「そうか」

アリアは満足そうに笑う。

それだけで十分だった。

しばらくして。

窓の外を見る。

昼の光が庭へ降り注いでいた。

「そろそろ戻ります」

「そうか」

「また来ますね!」

「そうか」

アリアは嬉しそうに笑う。

そして。

春風みたいに部屋を出ていった。

扉が閉まる。

静かになる。

ゼノは書類へ視線を落とした。

読もうとする。

ふと。

花の香りがした。

白い花の香り。

春の香り。

ゼノは小さく息を吐く。

そして再び書類へ視線を戻した。

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作者について

ひふみん

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忙しい日々に供給を✨ 隙間時間に供給出来る作品目指してます🔥 🔰試行錯誤中🔰 アドバイスお願いします🥺 🐈‍⬛0時12時更新予定🐈‍⬛

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