第6話 見てください

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/6/20 📚 シリーズ: 魔王様、結婚してください 📝 1,943文字 ✅ 全年齢

あらすじ

魔王城は三ヶ月で陥落した。 犯人は聖女だった。 魔王に一目惚れした聖女アリアは、毎日魔王城へ通い続ける。 「好きです!」 「結婚してください!」 今日も元気に告白するアリアと、 「帰れ」 と言いながら追い返せない魔王ゼノ。 気付けば門番も、侍女も、くーちゃんも、そして魔王城まで少しずつ変わっていく。 これは、 好きだから会いたい。 好きだから会いに行く。 ただそれだけを続けた聖女と、 不器用な魔王の優しい恋のお話。 🌸🏰🖤 疲れた日に少しだけほっこりできる、 花と綿毛ともふもふの異種族ラブコメです。

本文

第6話 見てください

今日のアリアは花冠だった。

淡い白。

薄青。

小さな花々を編み込んだ春の花冠。

髪はハーフアップ。

長い髪が背中でふわりと揺れる。

神殿の侍女達の力作だった。

「アリア様」

「はい?」

「今日は絶対見せてくださいね」

「もちろんです!」

元気な返事だった。

侍女達は満足そうに頷く。

ここ数ヶ月。

神殿では一つの噂があった。

『今日のアリア様の髪型』

である。

「今日は花冠ですか」

「可愛いですね」

「魔王様は褒めてくださるでしょうか」

すると。

アリアが胸を張った。

「褒めます!」

断言だった。

侍女達が笑う。

「すごい自信ですね」

「だって優しいですから!」

アリアは嬉しそうだった。

その評価。

人間界ではほぼ聞かない。

診療所へ向かう途中。

アリアは足を止めた。

「アリア様」

治療師が頭を下げる。

「おはようございます」

「おはようございます!」

診療所の中。

怪我人がいる。

包帯を巻く者。

眠る者。

静かな朝だった。

「昨日は多かったですね」

治療師がぽつりと言う。

「そうですね」

アリアは頷く。

それ以上は話さない。

代わりに笑う。

「皆さん元気になってよかったです」

治療師も笑った。

それだけだった。

◇◇◇

魔王城。

「こんにちは!」

門番が笑う。

「こんにちは、アリア様」

最近は自然だった。

最初からそうだったみたいに。

「今日は花畑ですね」

「そうなんです!」

アリアは花冠を指差した。

「見てください!」

「見ています」

「もっと見てください!」

門番は少し笑った。

今日も平和だった。

途中。

子供達に捕まる。

「アリアさま!」

「はい!」

元気に返事をする。

しゃがむ。

話を聞く。

笑う。

頭を撫でる。

その後。

花壇で止まる。

白い花が増えていた。

「増えてます」

嬉しそうだった。

最初は一株だった。

次の日も一株。

また次の日も。

アリアが植えた数は少ない。

本当に少ない。

それなのに。

気付けば増えていた。

誰かが植えていた。

誰かが水をやっていた。

誰かが世話をしていた。

アリアは知らない。

だから。

「増えてます!」

ただ喜ぶ。

それだけだった。

◇◇◇

執務室。

コンコン。

「アリアです!」

「入れ」

扉が開く。

花の香りが流れ込む。

そして。

春が入ってきた。

「ゼノ様!」

今日も元気だった。

ゼノは書類から顔を上げる。

一瞬だけ止まる。

花冠だった。

今日は花が多い。

白。

薄青。

柔らかな香り。

最近。

毎日違う。

そして。

自分がそれを認識していることにも気付いていた。

アリアは机の前まで来る。

ぴたりと止まる。

真剣な顔だった。

「見てください」

来た。

予想通りだった。

「何をだ」

「今日のお花です!」

アリアは少し身を乗り出す。

花冠が揺れる。

白い花。

薄青の花。

春の香り。

「神殿の皆さんが作ってくれたんです」

「そうか」

「可愛いですか?」

期待した目だった。

ゼノは見る。

花冠を見る。

アリアを見る。

そして。

「可愛いな」

沈黙。

アリアが固まる。

数秒。

瞬きを繰り返す。

「本当ですか?」

「嘘を言う理由がない」

アリアの顔がぱっと明るくなる。

「嬉しいです!」

満開だった。

「ガルドさん!」

「はい」

「聞きましたか!?」

「聞きました」

「可愛いそうです!」

「良かったですね」

ガルドは微笑む。

微笑みながら胃を押さえた。

今日も平和だった。

アリアはソファへ移動する。

くーが飛んできた。

「くー!」

「こんにちは」

ふわりと両手で抱き上げる。

くーは満足そうだった。

最近は完全に定位置である。

「ところで」

ガルドが口を開く。

「アリア様」

「はい?」

「髪型は毎日変わりますね」

「変わります!」

即答だった。

「なぜです?」

「侍女さん達が楽しいみたいなので」

なるほど。

本人理由ではなかった。

「アリア様ご自身は?」

「どれも好きです」

即答だった。

らしかった。

アリアはくーを撫でながら笑う。

「明日も違いますよ」

「そうか」

ゼノが答える。

アリアは嬉しそうだった。

「楽しみです!」

「お前がか」

「はい!」

満面の笑みだった。

ゼノは少しだけ息を吐いた。

◇◇◇

窓から風が吹く。

花の香りが広がる。

アリアは笑う。

くーも鳴く。

「くー!」

穏やかな時間だった。

そして。

「ゼノ様」

「なんだ」

アリアは少し照れたように笑う。

「好きです」

今日の告白だった。

いつも通りだった。

たぶん。

いつも通りのはずだった。

だが。

ゼノは少しだけ思う。

最近。

この言葉を聞くのが。

当たり前になっているなと。

「ゼノ様」

「なんだ」

「少しは好きになってくれました?」

追加だった。

アリアは期待した目をしている。

ゼノは少し考える。

花冠。

花の香り。

明るい声。

毎日来る綿毛。

そして。

「どうだろうな」

そう答えた。

アリアが固まる。

「え?」

「え?」

「えっ?」

顔が真っ赤になった。

ガルドは思った。

今の。

過去最高に前進していないかと。

ゼノは何も言わない。

書類へ視線を戻す。

けれど。

花の香りは。

いつもより少しだけ甘く感じた。

(第7話 会いたかったんです へ続く)🌸🖤✨

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作者について

ひふみん

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忙しい日々に供給を✨ 隙間時間に供給出来る作品目指してます🔥 🔰試行錯誤中🔰 アドバイスお願いします🥺 🐈‍⬛0時12時更新予定🐈‍⬛

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