第8話 今までで1番好きです

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/6/22 📚 シリーズ: 魔王様、結婚してください 📝 2,072文字 ✅ 全年齢

あらすじ

魔王城は三ヶ月で陥落した。 犯人は聖女だった。 魔王に一目惚れした聖女アリアは、毎日魔王城へ通い続ける。 「好きです!」 「結婚してください!」 今日も元気に告白するアリアと、 「帰れ」 と言いながら追い返せない魔王ゼノ。 気付けば門番も、侍女も、くーちゃんも、そして魔王城まで少しずつ変わっていく。 これは、 好きだから会いたい。 好きだから会いに行く。 ただそれだけを続けた聖女と、 不器用な魔王の優しい恋のお話。 🌸🏰🖤 疲れた日に少しだけほっこりできる、 花と綿毛ともふもふの異種族ラブコメです。

本文

第8話 今までで1番好きです

九十四日目。

今日のアリアは高めのポニーテールだった。

淡いクリームブロンドの長い髪。

高い位置で結ばれた髪が、歩くたびにふわりと揺れる。

白い花。

淡い青の花。

春風みたいな色だった。

神殿の侍女達は今日も楽しそうだった。

「今日は元気ですね」

「元気です!」

アリアは胸を張る。

「何かいいことでも?」

「ゼノ様に会えます!」

即答だった。

侍女達は笑う。

知っていた。

もはや説明は不要だった。

「アリア様」

「はい?」

若い侍女が首を傾げる。

「そんなに会いたいものですか?」

アリアは少し考える。

そして。

「会いたいです」

迷いなく答えた。

「どうしてでしょう」

「うーん」

アリアはまた考える。

少しだけ。

本当に少しだけ。

寂しそうに笑った。

「明日があるとは限りませんから」

侍女達が黙る。

アリアはすぐに笑った。

「なので今日会います!」

いつものアリアだった。

けれど。

誰も何も言わなかった。

◇◇◇

魔王城。

「こんにちは!」

「こんにちは、アリア様」

門番達が笑う。

最近では完全に日常だった。

アリアは途中で立ち止まる。

花壇だった。

白い花。

淡い青の花。

風に揺れている。

「わあ」

最初は小さかった。

一株。

二株。

それだけだったのに。

いつの間にか。

花壇になっていた。

白い花が風に揺れる。

アリアはしばらく眺める。

それから。

「綺麗です」

嬉しそうに笑った。

◇◇◇

執務室。

コンコン。

「アリアです!」

「入れ」

扉が開く。

花の香りが流れ込む。

そして。

春が入ってきた。

「ゼノ様!」

今日も元気だった。

ゼノは書類から顔を上げる。

高い位置で揺れる髪。

白い花。

淡い青の花。

今日も違う。

最近。

それを見るのが当たり前になっていた。

「見てください」

来た。

予想通りだった。

アリアはくるりと回る。

ポニーテールが揺れる。

花が揺れる。

「今日は高いんです」

「見れば分かる」

「分かりました?」

「分かる」

アリアが固まった。

「分かるんですか?」

「見ればな」

アリアは数秒瞬きを繰り返した。

そして。

ぱっと笑う。

「嬉しいです!」

満開だった。

◇◇◇

ソファへ移動する。

すると。

「くー!」

黒い毛玉が飛んできた。

「くー」

「こんにちは」

抱き上げる。

ふわふわだった。

腕の中で小さく丸くなる。

くーは満足そうだった。

最近では完全に日課である。

アリアはくーを撫でながら笑う。

そして。

何度もゼノを見る。

書類を読む横顔。

ペンを持つ指。

考え込む時の癖。

全部見ていた。

「何だ」

不意に言われる。

アリアは瞬きをした。

「え?」

「さっきから見ているだろう」

見つかった。

「見てます」

素直だった。

「なぜだ」

アリアは少し考える。

そして笑った。

「好きだからです」

当たり前みたいに言った。

ゼノは無言だった。

ガルドは頭を抱えた。

くーは何も分かっていなかった。

「顔が見たいんです」

アリアは続ける。

「声も聞きたいです」

「会いたいですし」

「隣にいたいです」

全部。

当たり前みたいだった。

「そうか」

ゼノは答える。

アリアはそれだけで嬉しそうに笑った。

◇◇◇

窓の外へ視線を向ける。

庭園。

花壇。

増えた花。

最初は何もなかった場所。

今は花が咲いている。

「綺麗ですね」

「そうだな」

アリアは花を見る。

そして。

もう一度ゼノを見る。

花を見るより長く。

ずっと。

◇◇◇

「ゼノ様」

「なんだ」

アリアは少しだけ照れた。

だが。

目は逸らさなかった。

「私」

「惚れっぽいんです」

ゼノは黙る。

「好きになった人もいました」

「素敵だなって思った人もいました」

静かな声だった。

「でも」

アリアはゼノを見る。

まっすぐ。

本当にまっすぐ。

「会えなくて寂しかったことはありませんでした」

「顔が見たくて走ったこともありませんでした」

「毎日会いに行ったこともありませんでした」

ゼノは何も言わない。

だが聞いていた。

全部。

「だから分かるんです」

アリアは少しだけ恥ずかしそうに笑った。

「今までで一番好きです」

静寂が落ちる。

ガルドも何も言わない。

くーも静かだった。

「こんなに会いたくなったのは初めてです」

「こんなに顔が見たかったのも初めてです」

「だから」

少し照れて。

少し笑って。

アリアは言った。

「今までで一番好きです」

その言葉は告白だった。

けれど。

どこか違った。

駆け引きがない。

見返りも求めない。

ただ。

事実を伝えているだけだった。

ゼノはアリアを見る。

初めて。

少し長く見る。

誰にでも優しい聖女。

そう思っていた。

実際そうなのだろう。

だが。

今の言葉は違った。

誰でもではない。

自分だった。

アリアが毎日会いに来た理由。

花を植えた理由。

笑っていた理由。

全部の始まり。

それが自分だったのだと。

初めて理解した。

アリアは立ち上がる。

「また来ますね」

いつもの笑顔だった。

「明日も」

「明後日も」

「その次も」

ゼノはしばらくアリアを見る。

そして。

「好きにしろ」

そう答えた。

アリアは嬉しそうに笑う。

扉が閉まる。

花の香りだけが少し残った。

ゼノの視線は。

しばらくその扉から動かなかった。

ガルドは何も言わない。

胃のために。

そして。

たぶん。

魔王自身もまだ気付いていなかった。

その綿毛が。

自分の中でどれほど大きくなっているのかを。

(第9話 死ななくても痛いじゃないですか!! へ続く)🌸🖤✨

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作者について

ひふみん

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忙しい日々に供給を✨ 隙間時間に供給出来る作品目指してます🔥 🔰試行錯誤中🔰 アドバイスお願いします🥺 🐈‍⬛0時12時更新予定🐈‍⬛

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