第2話「クイーンの秘密」
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
あらすじ 中学二年生・神崎恭也は、いつかカプセルウォーズを遊ぶことを夢見ていた。 しかし、一回一万円もするロボットガチャなど、学生の小遣いでは到底回せない。 ある日、商店街の片隅で「ハズレ品・在庫処分」と書かれた100円のクジガチャを見つける。 暇つぶしのつもりで回したそのカプセルには、本来なら一万円でしか手に入らない超高級ロボット―― 《クイーン》 が入っていた。 しかもクイーンは、普通のプレイヤーが知らない謎の機能を秘めた特別な機体だった。 偶然から始まった出会いは、やがて恭也をカプセルウォーズ界の頂点を巡る戦いへと導いていく。
本文
「しゃ、しゃべったぁぁぁ!?」
夕暮れの商店街に響いた叫び声。
恭也は慌てて辺りを見回した。
「……誰も聞いてない、よな?」
幸い、人通りは少なく、誰も気にした様子はない。
胸をなで下ろしたその時。
『マスター。大声は周囲の注目を集めます。』
「またしゃべった!」
恭也は慌ててクイーンを両手で持ち上げる。
「ロ、ロボットがしゃべるなんて聞いてないぞ!」
『その反応から察するに、マスターはカプセルウォーズ初心者ですね。』
「初心者も何も、一度も遊んだことないよ! 一万円もするんだから!」
クイーンは小さく微笑んだように見えた。
『なるほど。それで私を百円で入手したのですね。』
「そうなんだよ……って、そこ笑うところ?」
『いいえ。奇跡だと思っています。』
その言葉に、恭也は少し照れくさそうに頭をかいた。
二人は並んで家への道を歩き始めた。
「ところで、本当にロボットってみんなしゃべるの?」
『はい。』
「え?」
『正式名称はAIコア搭載戦術支援ユニット。すべてのチェスフレームには人工知能が搭載されています。』
「じゃあ、テレビに映ってるプレイヤーもロボットと話してるのか?」
『もちろんです。ただし、外部スピーカー機能は通常オフになっています。ゲーム機と接続した時だけ会話する設定にしている方がほとんどです。』
「じゃあ何でクイーンは普通にしゃべってるんだ?」
『私はマスターと常時リンクしていますから。』
「常時リンク?」
『はい。認証されたマスターとは、近距離であればいつでも会話できます。』
恭也は驚きっぱなしだった。
「知らなかった……。」
『知らなくても無理はありません。初心者向けの紹介番組では、AI機能はあまり取り上げられませんので。』
「なんか、思ってたゲームと全然違うな。」
『カプセルウォーズは、ロボットを操作するゲームではありません。』
クイーンは静かに続ける。
『私たちと共に戦うゲームです。』
その一言が、恭也の胸に強く響いた。
「共に……。」
『私たちは道具ではありません。パートナーです。』
恭也はケース越しにクイーンを見る。
さっきまで「高価な玩具」だと思っていた小さなロボットが、今は本当に一人の相棒のように感じられた。
「よろしくな、クイーン。」
『はい、マスター。改めまして、よろしくお願いいたします。』
少しだけ嬉しそうな声だった。
しばらく歩いたあと、恭也はふと思い出した。
「そういえば、クイーンってどれくらい強いんだ?」
『チェスフレームの中では最高クラスです。』
「やっぱり!」
『しかし、武器がありません。』
「……あ。」
『現在の私の装備は、標準装甲と最低限の格闘機能のみです。』
「つまり?」
『素手です。』
「素手!?」
『はい。武器ガチャで装備を入手しなければ、本来の性能は発揮できません。』
恭也は財布を開く。
中には数枚の硬貨。
「武器ガチャ……千円かぁ。」
『焦る必要はありません。』
クイーンは優しく言った。
『強さとは、装備だけで決まるものではありません。マスターと私が成長すれば、必ず勝てるようになります。』
その言葉に、恭也は笑顔になる。
「よし!」
「一緒に最強を目指そう、クイーン!」
『はい。マスター。』
夕焼けに染まる帰り道。
少年と小さなクイーンは、初めて"パートナー"として歩き始めたのだった。
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