第3話「母さんの誤解」
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
あらすじ 中学二年生・神崎恭也は、いつかカプセルウォーズを遊ぶことを夢見ていた。 しかし、一回一万円もするロボットガチャなど、学生の小遣いでは到底回せない。 ある日、商店街の片隅で「ハズレ品・在庫処分」と書かれた100円のクジガチャを見つける。 暇つぶしのつもりで回したそのカプセルには、本来なら一万円でしか手に入らない超高級ロボット―― 《クイーン》 が入っていた。 しかもクイーンは、普通のプレイヤーが知らない謎の機能を秘めた特別な機体だった。 偶然から始まった出会いは、やがて恭也をカプセルウォーズ界の頂点を巡る戦いへと導いていく。
本文
夕焼けの帰り道。
恭也は財布の中を見つめ、大きくため息をついた。
「武器ガチャ、一回千円か……。」
ロボットは手に入った。
それも伝説級の《クイーン》。
だが武器がなければ、本来の力は発揮できない。
『焦る必要はありません、マスター。』
「そう言われてもなぁ……。」
『武器は大会の景品や中古ショップでも入手できます。必ずしもガチャだけではありません。』
「でも、どれも高そうだな。」
『……否定はできません。』
恭也は苦笑した。
「まずは小遣いを貯めるしかないか。」
そんな話をしながら、自宅へと帰っていった。
「ただいまー。」
玄関のドアを開ける。
「おかえり、恭也。」
台所から母・美香が顔を出した。
「今日は遅かったわね。」
「ちょっと寄り道。」
靴を脱いだ拍子に、ポケットからクイーンのケースが床へ転がる。
コロン。
透明なケースの中で、銀色のクイーンが姿を現した。
「……え?」
母の動きが止まる。
「ちょっと待って。」
ケースを拾い上げ、目を見開いた。
「それ……カプセルウォーズじゃない!」
恭也は嫌な予感がした。
「え、あの……。」
「あなた、これ一万円するんでしょ!?」
「いや、違っ──」
「そんなお金、うちにないでしょ!」
母の声が家中に響く。
「まさか盗んできたんじゃないでしょうね!?」
「違うって!」
『失礼します。』
突然、ケースの中から落ち着いた少女の声が聞こえた。
「「え?」」
親子そろって固まる。
『私はチェスフレーム《クイーン》。説明を許可してください。』
「しゃ……しゃべった!?」
母は目を丸くした。
クイーンは丁寧な口調で話し始める。
『マスターは私を盗んではいません。』
『商店街の玩具店に設置されていた百円くじガチャにて、正規の方法で私を入手しました。』
「百円?」
『はい。景品として封入されていました。』
母は呆然と恭也を見る。
「本当に?」
「本当だよ! 俺も信じられなかったくらいだ。」
『私が証人です。』
しばらく沈黙が流れた。
やがて母は大きく息を吐き、胸を押さえた。
「もう……心臓に悪いわ。」
恭也は苦笑する。
「ごめん。」
「盗んできたんじゃないなら安心したけど……。」
母はクイーンをまじまじと見つめる。
「最近のおもちゃって、本当にしゃべるのね。」
『ありがとうございます。』
「しかも礼儀正しいし。」
「クイーンはすごくいいやつなんだ。」
『恐縮です。』
母は少し笑うと、恭也にケースを返した。
「でも約束よ。」
「ん?」
「武器ガチャ欲しさに無茶なお金の使い方はしないこと。」
「うっ……。」
図星だった。
「ちゃんと小遣いの範囲で遊びなさい。」
「うん。」
『マスターは堅実な方です。ご安心ください。』
「ふふっ。」
母は思わず笑ってしまう。
「あなたが見張ってくれるなら安心ね、クイーンちゃん。」
『お任せください。』
こうして誤解は無事に解けた。
その夜。
自室の机にケースを置いた恭也は、小さく笑う。
「今日は大変だったな。」
『ですが、ご家族に認めていただけたことは大きな一歩です。』
「そうだな。」
クイーンもどこか嬉しそうに微笑んでいた。
二人の"パートナー生活"は、まだ始まったばかりだった。
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