014、流れ着いた者の名は「鈴蘭」
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ラスティアと対をなす世界、ストラチア。そこで起きた物語。 これは、非日常、日常を描いた、ファンタジーと現代、SF、全てをごちゃ混ぜにした物語です。
本文
イメリア歴382年。
朱雀領の早朝、まだ人々が寝静まってる時間。
昔、千歳達が吐き出された時空のゆがみから、一人の少女が姿を現す。
少女「……ん」
その少女、荒城鈴蘭は辺りを見渡した。
見覚えのない町並み。やけに古い建築物。
鈴蘭「……ここ、どこ?」
鈴蘭が不安げに辺りを歩いていると、前方の家から一人姿を現す。
敬三「む? 見ない顔だな。どなたかな?」
鈴蘭「私は荒城鈴蘭。あの、ここはどこですか?」
敬三「ここは朱雀領だ。侍と漁師、農家が中心の領だな」
鈴蘭「初めて聞いた……。あなたは?」
敬三「私は橘敬三。ただの年老いた漁師さ」
鈴蘭「あの、どうやったら沖縄に帰れますか?」
敬三「おきなわ? 初めて聞く名だな」
鈴蘭「え? あの、日本は知ってますか?」
敬三「……いや、知らない。初めて聞く。それは国の名前か?」
鈴蘭「えぇ……」
敬三「どうやら訳ありのようだな。どうだ、私が皆を起こそうか?」
鈴蘭「え? でも、まだ早朝ですよ?」
敬三「いつまでも起きないみんなが悪い。ちょっと待っててくれ」
敬三は大きく息を吸うと、大声を張り上げた。
敬三「みんな!! 起きてくれ!!」
何事かと飛び出してきたのは、三日月と半兵衛、市治の3人。
家屋から大きな物音が聞こえだす。
三日月「敬三さん!? 何事ですか!?」
半兵衛「野生動物でござるか!?」
市治「うん? 誰だ、この少女は?」
敬三「起きたか。代表者を集めてくれ。彼女について話し合いたい」
鈴蘭「え、えええ!?」
一香「さて、自己紹介は一通り済んだから、鈴蘭さんの事情を教えてもらいましょうか」
鈴蘭「はい。私は、東京から沖縄の飛行機に乗ってたんですが、途中で乱気流に巻き込まれて、飛行機が制御不能になったんです。
そして、『ああ、このまま死ぬんだろうなあ』て思って目を閉じたんです。意識が戻ると、ここにいました」
半兵衛「ひこうき? とは何でござるか?」
鈴蘭「えーと、空飛ぶ大きな機械です」
市治「きかい?」
鈴蘭「えぇ……」
三日月「えっと、鈴蘭さんは魔族ですよね?」
鈴蘭「はい。ただ、日本では種族は隠せ、と母から言われてました」
半兵衛「もう何が何だかわからんでござる……」
市治「右に同じ……」
朝雲「恐らく、私の祖先や、半兵衛さん達の時のように、何らかの事情でこちらに来たのでしょう。何かは先ほど言った内容ですね。
分からない単語だらけですが、恐らくそう言うことでしょう」
風雲「ふむ。鈴蘭殿。行く宛はあるのかい?」
鈴蘭「えーと……。沖縄に帰りたいです」
朝雲「鈴蘭さん。申し訳ないですが、恐らく日本に帰ることは不可能だと思います」
鈴蘭「そう、なんですか……?」
風雲「我々も帰る場所を失った過去がありましてな」
鈴蘭「そう、ですか……」
一香「鈴蘭さん、気を落とさないでください」
鈴蘭「いえ、大丈夫です……」
風雲「鈴蘭殿。もし良ければ、この朱雀領に住んでみないか?」
鈴蘭「え、ええ?」
半兵衛「大丈夫でござるか?」
市治「なんか同じ言語なのに言葉が通じない気がするんだよなあ」
敬三「エルフとも最初はそうだったんだ。じき慣れるさ」
鈴蘭「良いのでしょうか?」
風雲「異論がある者はいるか?」
皆首を横に振る。
鈴蘭「あの、ありがとうございます」
風雲「良い。これからは同じ領民として、共に暮らそう」
鈴蘭「……はい!」
鈴蘭の目には、うっすらと光るモノがあったようだ。
新たな領民、荒城鈴蘭。元日本にいた、種族を隠す魔族。
その彼女が、朱雀領の日常を新しい彩りで塗り広げていくことでしょう。
後書き
荒城鈴蘭さん、航空事故から突然この地に来たようでびっくりしたでしょうね。私でも同じ境遇ならびっくりします。
鈴蘭さんの中では、朱雀領が、死後の国なのか、まだ生きていてたどり着いた国なのか分からないでいます。
きっと彼女は最後までこの疑問は消えないかもしれません。
ですが、朱雀領の日常に触れ、仲間と笑い、働き、暮らしていくうちに、少しずつどちらでも良くなっていくでしょうね。
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