元カノそっくりな暗殺兵器が届いたので、様子見てます

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/17 📚 シリーズ: 元カノそっくりな暗殺兵器が届いたので、様子見てます 📝 3,138文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

大学時代の恋人・月乃を事故で亡くしてから、夜凪透は感情を凍らせて生きてきた。笑わない。期待しない。失わないために、何も求めない。 そんな命日の夜、彼のもとに月乃そっくりのアンドロイド「シンシア」が届く。だが彼女の正体は、亡き妻を取り戻したいと願った父の研究から生まれた、最新鋭の暗殺兵器だった。 ハニートラップ型のルナ、感情を持つ機会を与えられなかったディアナとアルテミス——それぞれの兵器との出会いと別れを通して、透は凍らせてきた感情と、少しずつ向き合っていく。 「バックアップされる記憶」と「その瞬間にしか存在しない感情」。人と機械の境界で揺れる者たちが、喪失の先に見つける再生の物語。 【お薦めな人】 切ないSF×ヒューマンドラマが好きな人 「アンドロイドに心は宿るか」というテーマに惹かれる人 喪失や後悔を抱えたキャラクターの再生譚が好きな人 家族(親子)の断絶と、不器用な和解の過程を読みたい人 シリアスな軸に、コミカルな掛け合いも欲しい人 泣けるバトルもの、切ない退場シーンに弱い人

本文

第2話「型番の違和感」

 朝は、匂いから始まった。

 炊きたての白米の香り。

 湯気を立てる味噌汁。

 卵の焼ける、小さな音。

 透が階段を降りるより先に、家の中はすでに動き出していた。

 昨日までとは、違う気配だった。

 リビングに入ると、妹の陽菜がソファに座ったまま、興味津々の顔でキッチンを覗き込んでいた。

「お兄ちゃん、見て見て」

「何だ」

「シンシアさん、めちゃくちゃ手際いい」

 その視線の先で、シンシアが淡々と朝食を作っていた。

 フライパンを振る動作に、迷いがない。

 包丁の音は規則正しく、リズムを刻んでいる。

 量産型の家政婦アンドロイドが、少し離れた場所で控えている。

 いつもなら、朝食を作るのはその役目だった。

 だが今朝は、キッチンの主役が変わっていた。

「おはようございます、陽菜様」

 シンシアが振り返り、微笑む。

「おはよ! シンシアさんも、おはよ」

 陽菜は、あっさりと打ち解けていた。

 昨夜遅くに帰ってきた透から、簡単な説明だけは受けている。

 ——月乃に似た、新しいアンドロイドが来た。

 それだけの説明で、陽菜は特に深く追及しなかった。

 もっとも、透自身が多くを語れなかっただけなのだが。

「透様、陽菜様」

 シンシアが、皿を並べる。

「本日の朝食は、和食にいたしました。栄養バランスを考慮しております」

「ありがとうございます」

 陽菜が即座に手を合わせる。

「いただきます!」

 食卓には、炊きたての白米と味噌汁、焼き魚、卵焼きが並んでいた。

 透は、無言で席についた。

 妹の世話は、以前からこうして誰かに任せてきた。

 家事全般、身の回りのこと、細かな気遣い。

 父が設計した量産型の家政婦アンドロイドが、これまでその役割を担ってきた。

 透自身が手を動かすことは、ほとんどない。

 それが当たり前だと思っていた。

 だから今、シンシアがその役目を自然に引き継いでいることにも、透は特に違和感を持たなかった。

 むしろ。

 妹が楽しそうにしていることの方が、透にとっては珍しい光景だった。

「シンシアさんってさ」

 陽菜が味噌汁をすすりながら言う。

「家事、全部できるの?」

「はい」

「掃除も?」

「はい」

「洗濯も?」

「はい」

「じゃあ、恋愛相談も?」

「対応可能です」

 即答だった。

 陽菜が、思わず噴き出す。

「早くない?」

「経験値は十分にございます」

「経験、あるんだ」

「学習データとして蓄積しております」

 妙に真面目な口調が、かえって可笑しかった。

 陽菜は肩を震わせて笑っている。

 透は、その様子を横目で見ながら、白米を口に運んだ。

 味は分からない。

 だが、食卓の空気が、いつもより軽いことには気づいていた。

     ◇

 朝食が終わりかけた頃、透はふと箸を止めた。

「型番」

 その一言に、シンシアが顔を向ける。

「はい」

「昨日、七番って言ってたな」

「はい。CYN-07です」

「量産型は、偶数のはずだ」

 透は、静かに続けた。

 家政婦アンドロイドの管理は、以前から目にしてきた。

 型番の末尾。

 偶数は市販の量産機。

 奇数は、社外に出回らない試作機。

 どこかで、そう聞いた覚えがある。

 誰から聞いたのかは、思い出せない。

 だが、記憶の底に確かに残っていた。

「お前は」

 透は、シンシアを見た。

「試作機、か」

 シンシアは、答えなかった。

 ただ、静かに微笑んでいる。

 その微笑みが、何かを覆い隠しているように見えた。

 沈黙が、数秒続いた。

 陽菜だけが、二人の間の空気に気づかず、味噌汁をすすっている。

「……まあ、いいけど」

 透は、それ以上追及しなかった。

 追及したところで、答えが返ってくるとは思えなかった。

 それに——追及して、何になる。

 感情を動かす必要のない話だ。

 そう自分に言い聞かせて、透は箸を置いた。

 だが。

 胸の奥に、小さな棘が残った。

 説明のつかない、違和感だった。

     ◇

 その日は休日だった。

 透はリビングのソファで、仕事の資料に目を通していた。

 窓の外は、相変わらず曇り空だった。

 シンシアは、掃除機をかけながら家中を回っている。

 その動きに、無駄がない。

 だが、時折足を止め、窓の外を眺めることがあった。

 何を見ているのか、透には分からなかった。

「透様」

 不意に、声がかかった。

 顔を上げると、シンシアがすぐ近くに立っていた。

「何だ」

「肩が凝っておられますね」

「別に」

「姿勢が九分間、変化しておりません」

 的確すぎる指摘に、透は言葉を失った。

「揉みましょうか」

「いい」

「サービス機能の一環です」

「いらない」

「他にも、様々な機能がございます」

 シンシアは、真顔のまま続けた。

「性的な機能も、搭載しております」

 一瞬、リビングの空気が止まった。

「はあ!?」

 声を上げたのは、陽菜だった。

 いつの間にか階段の途中で立ち止まり、二人のやり取りを聞いていたらしい。

「シンシアさん、朝から何言ってんの!?」

「事実をお伝えしたまでです」

「事実でも言わなくていいことあるよね!?」

 陽菜が慌ててキッチンへ駆け込み、シンシアの腕を引っ張る。

 透は、資料から顔を上げないまま、小さく息を吐いた。

 反応らしい反応は、しなかった。

 だが。

 資料の文字は、しばらく頭に入ってこなかった。

「お兄ちゃんも、何か言ってよ!」

「別に」

「別にって!」

 陽菜が呆れたように肩を落とす。

 シンシアは、その様子を静かに見つめていた。

 その視線の中に、微かな観察のようなものが混じっている気がした。

 だが、透はそれ以上気にしなかった。

 気にする理由が、見つからなかったからだ。

     ◇

 夕方になり、透は買い物のために家を出た。

 傘を持たずに済むほど、空は落ち着いていた。

 商店街を歩きながら、透はふと考える。

 型番のこと。

 答えなかった、あの沈黙のこと。

 考えたところで、答えは出ない。

 それでも、頭の片隅から離れなかった。

 帰り道、荷物を両手に提げていると、隣に誰かが並んだ。

「お荷物、お持ちします」

 シンシアだった。

 いつの間についてきたのか、透は気づかなかった。

「一人で平気だ」

「透様の疲労指数が、平均を上回っております」

「大げさだ」

「大げさではありません」

 シンシアは、答えるよりも早く、荷物の片方を取り上げていた。

「私の役目です」

 抵抗する間もなかった。

 軽々と持ち上げられた袋を見て、透は言葉を失う。

 そのまま、シンシアは自然に距離を詰めてきた。

 腕が、軽く触れる。

 人工皮膚の温度が、思っていたよりも柔らかいことに、透は驚いた。

 温かい。

 当たり前のように。

「近い」

「そうでしょうか」

「そうだ」

「失礼いたしました」

 言葉では謝りながら、距離は変わらなかった。

 透は、それ以上何も言わなかった。

 言えば、意識してしまう気がした。

 夕焼けが、二人の影を長く伸ばしていた。

 並んで歩く、二つの影。

 その光景に、透はまだ名前をつけられずにいた。

 だが。

 悪くはない。

 そう思ってしまった自分に、透は少しだけ戸惑っていた。

     ◇

 夜。

 夕食を終え、リビングの明かりが落とされる頃。

 透は自室のベッドに横になっていた。

 天井を見つめる。

 今日一日を、振り返る。

 妹の笑い声。

 シンシアの軽口。

 型番の沈黙。

 触れた腕の、温かさ。

 どれも、これまでの生活にはなかったものだった。

 感情を動かさないと決めていたはずなのに。

 気づけば、今日一日を思い返している自分がいた。

 それが、少しだけ怖かった。

 だが同時に。

 悪くない、とも思っていた。

 その両方の感情が、透の中で静かにせめぎ合っていた。

 答えは、まだ出ない。

 出さなくてもいい、と透は思うことにした。

 窓の外では、雲が薄く月を隠していた。

 その光は、まだ誰の目にも届いていなかった。

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作者について

天霧 セナ

天霧 セナ

広島在住。AI生成を使用し小説とイラストをやってます。 ファンタジー・SF・恋愛など色々書いてますが、 一番大事にしてるのは感情の動き。AIで感情表現は何処までできるかをテーマにしてます。 今年...

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