狐面の絵馬に願いを込めて

作者: 津組セナ | 作品数: 8作品 | ✅ 完結

月城貴乃(16)は、部活動の紹介で所属を聞かれた際、笑顔で誤魔化す。彼女は榊森神社でのアルバイトに応募し、宮司の榊朔也(54)から「無理な日は申告してください」と言われる。掃除をしながら、雨の日の校庭で聞いた笛の音や狐面の言い伝えを思い出し、神社という新しい居場所での祭りに向けた人手不足を知る貴乃。文化祭の係決めで、同級生たちが部活の練習を理由に抜ける中、貴乃は真壁湊(17)とともに授与所に立つ。迷子を母親に案内した瞬間、過去の大声で返事を強いられた記憶がよみがえる。湊は、「小さな声でも相手を見ていれば届く」と励ます。夜、古い絵馬が棚から落ち、貴乃は10年前の絵馬を手に取る。世話役の藤代澄江(72)から神社を手伝う若者の減少を聞き、朔也に試験後の手伝いを約束すると、心が少し軽くなる。 業務をこなす日々の中、貴乃は神社の仕事に閉じ込められていると感じ、体育の見学を懇願する同級生に羨望を抱く。祭りで怪我をした子が笑顔で「大丈夫」と言った瞬間、彼女もまた過去の自分を思い出す。湊は理由を尋ねず、さりげなく茶を差し入れる。石段で転ぶことで厄が落ちるという言い伝えを思い出しながら、貴乃は返納所の任を受けた際、亡夫の御守を手放せない佐伯文(68)と出会い、諭される。神社の役目を果たしながら、貴乃は友人に「神社を続けるべき」と伝える勇気を持った。そのことは、かつて澄江が若者たちに言った言葉と重なっていた。 文化祭で神社の仕事をからかわれた貴乃は、辞める決意を固め社務所へ向かうが、朔也に「頼むことと強いることは別だ」と諭される。試験明けの雨祭りでの欠員、湊や澄江の協力の中で、貴乃は初めて自分の希望を口にする。周囲は彼女の休みを尊重し、役割を分け直して協力する。雨の中での参拝は願いが近いという言い伝えの通り、濡れた絵馬の文字が浮かび上がる。その中には、若き日の澄江の「誰も無理をしない神社に」という願いが込められていた。 貴乃は神社の役割を果たしながら、必要な形を見つけていくことが大切だと悟る。そして、春に新人たちに休み方を伝え、新しい希望を迎える準備をする。無理をしない日々こそが、甘酒の味をさらに引き立てることを知った貴乃は、神社での役割に誇りを持つようになる。

エピソード一覧

第3話: 第三話「絵馬の裏側」 (2026/11/3)
第6話: 第六話「狐面の願い」 (2026/11/3)
第7話: 第七話「雨の日の役割」 (2026/11/3)
第8話: 第八話「結び直す青春」 (2026/11/3)